残念ながら, 2020年11月実施予定の統計検定(PBT)は中止になった模様. CBT なら実施しているということだが, 1級は未対応…
数学夏祭りというものが開催されているということで, 2020年8月31日から14日間連続で17:00に出題されるということ。回答の投稿には Twitter のアカウントが必要ということで小職は直接の参加ができない状況だが, これのために Twitter のアカウントを開設する気にもならないので個人的にこのブログに投稿できればと思う.
なお, 出題は Twitter のアカウントにて行われるとのこと.
ベイズの定理(もっとも単純な例)
ベイズの定理とは事後確率と事前確率の変換を表したものである. ここでは最も簡単なモデルを取り扱ってみよう.
ここでは以下の仮定をする.
- 日本人全体のうち, あるものMをもっているという比率を π とする.
- あるものをもっている日本人に対し質問Qを行ったときに期待した回答(
私は確かにMをもっている
)が得られる確率をπAとする. - あるものをもっていない日本人に対し質問Qを行ったときに期待した回答(
私は確かにMをもっていない
)が得られる確率をπSとする.
これらの仮定のもとである日本人に対し質問Qを行ったところ,
私は確かにMをもっている
という回答を得た.
その人が本当に M をもっている確率を求めてみよう.
結論から言うと, これはベイズの定理によって計算できる.
実際に M をもっているという事象を H, 質問Qにより私は確かにMをもっている
という回答を得るという事象をAとする.
求める確率は Pr(H|A) であり, これはベイズの定理により Pr(A|H)Pr(H)/(Pr(A|H)Pr(H)+Pr(A|¬H)Pr(¬H)) に等しい.
これに仮定で設定した値を代入すると (πAπ)/(πAπ+(1-πS)(1-π)) を得る.
某所にて, (要約すると)ArcTan(5/12) および ArcTan(3/4) を度数法で表せ(小数以下切り捨て)
なる問題を出題した. そのときは円周率 π が 333/106<π<355/113 と近似できるというヒントを付けた.
これと, sin(x)<x<tan(x) (第1象限の角に限る) という大小関係をうまく用いてもらい, 適当な評価をしてもらう算段でいた.
実際に, sin(x)=S, tan(x)=T は正確に求められる状況であり, π1<π<π2 という条件を与えれば, x [rad]= θ [deg] という関係においては 180S/π2<θ<180T/π1 という関係が成り立つ.
ただ, この評価方法は0°<θ<15° 程度でないと大雑把すぎるので, 4倍角や5倍角の正弦や正接を計算させる必要があった。
ところが, 必要であれば2倍角の計算をすればいいようなもっといい近似方法があったようだ. 屈折率の式でおなじみのヴィレブロルト・スネルが見出した式である, 3sin(x)/(2+cos(x))<x<(2sin(x)+tan(x))/3 である (以降, この不等式の左辺をL, 右辺をUとする).
これにより、角度の評価は 180L/π2<θ<180U/π1 となる.
何といっても, その誤差は x5に比例するということが大きいし係数も小さい.
下限の比較では sin(x)=x-x3/6+Ο(x5) に対し, 3sin(x)/(2+cos(x))=x-x5/180+Ο(x7) となり, 上限の比較では tan(x)=x+x3/3+Ο(x5) に対し, (2sin(x)+tan(x))/3=x+x5/20+Ο(x7) となる。
この方法で当初の問題を解いてみると…
θ=ArcTan(5/12) のとき, 15/38<ArcTan(5/12)<185/468 は度数法ではこの時点で15900/703<θ<20905/923 と評価できる. この時点で小数第1位まで確定する. (θ=22.6…°)
θ=ArcTan(3/4) のとき, 9/14<θ<13/20 は度数法ではこの時点で9540/259<θ<13221/355 と評価できる. ざっと, θ=37°±0.1° といったところか.
さらに2倍角の公式で得た角と直角との差を評価すると 21/74<π/2-2Arctan(3/4)<511/1800 となり, 122767/3330<θ<50475/1369 を得る. なんと, これで小数第2位まで確定する (θ=36.86…°)
段位認定モードといえば beatmaniaIIDX がその走りであるが, 現在稼働している DanceDanceRevolution A20にも実装されている. もっとも, 私にとっては皆伝はおろか六段すら相当に遠い存在ではあるのだが…
稼働時から少しずつ実力を伸ばしていき, 漸くSingle Play の五段合格にこぎつけることができた. もっとも, いわゆる捨てノーツがそれなりにあるのでスコアはひどいことになっているが.
Double Play についてはもっと体力をつけてから挑戦したい. 四段を取れたのも正直に言って奇跡的なもので, 意識した捨てノーツがないにもかかわらずこの結果なのでより精進したい.


9回目の受験にして漸く実用数学技能検定1級に合格することができました!
初めて挑戦したのは6年前. 直前に受験した準1級を満点で合格したのだから1級も何とかなるだろうと思ってチャレンジして, その結果が惨敗だったときの悔しさを胸に, 続けて2回受験するもまるで歯が立たず…
転居で環境が変わったところで気軽に受験できなくなった(個人受験会場が近くになかった)ために諦めていたところ, 次の転居ではまた個人受験会場が近くなったことから再起を決意.
昨年から受験をしたもののやはり合格には届かなかったが, 解法が全く思い浮かばないということがなくなったので、もう少しで手が届くという感触は得ていた。
それでも, 前回の結果が逆ボーダー (1次が4.5/7 (合格ライン 5/7), 2次が (2.3/4 (合格ライン 2.5/4)) だったときは心が折れかけた…
が, ここまでできているのだから何とかなると気合を入れ直したところ, 今度こそ合格ラインを超えることができたのである.

連分数を処理する数式処理ソフトウェア
記事の都合上, 解釈が面倒な数式を書くので, 同じ式を表現した WolframAlpha へのリンクを設定しています.
連分数とは、分数の分母にさらに分数が含まれるような数値表現である.
例えば, 1+2/(3+4/(5+6/7))というようなものである.
特に、分子の部分がすべて 1 になっているような連分数のことを正則連分数といい, 単に連分数といった時には正則連分数であることを暗黙で示していることがある.
正則連分数について, a0+1/(a1+1/(a2+1/a3)) を [a0; a1, a2, a3] と表現する. 各 ai は正の整数 (a0 は0や負の値を含めた整数) である.
ある実数を(正則)連分数に変換することを連分数展開というが, 有理数ならば有限項の連分数で, 無理数ならば無限項の連分数で表現されることがわかっている.例えば, 355/113=[3; 7, 16], π=[3; 7, 15, 1, 292, 1, 1, 1, 2, 1, 3, 1, 14, 2, 1, 1, 2, 2, 2, 2, 1, 84, 2, 1, 1, 15, 3, 13, 1, …] となる.
無理数を分数(整数比)で近似する場合, 連分数展開を途中で打ち切って真分数や仮分数に戻すという手段が使われる。 そうして現れる分子や分母の値は, それ以下の整数を用いたあらゆる整数比(分数)よりもよりよい近似となることが知られている.
実際に, 例に挙げた 355/113=[3; 7, 16]=[3; 7, 15, 1] は 355 以下の整数を用いた分数の中で最良の円周率の近似である.
さて, 正則連分数展開は次の手順で行われる.
- 正則連分数展開を行いたい数を ω0 とし, n を 0 とする.
- ωn の整数部分を an とする.
- ωn の小数部分が 0 に等しい場合は, ak (k≥n+1) は存在しない, すなわち, 連分数表現は an の項で打ち切る.
- ωn+1 を ωn=an+1/ωn+1 を満たすように定める.
- n に 1 を加えて2番目の手続きに戻る.
この作業を行う数式処理ソフトををいくつか紹介する.
キログラムの定義が変わった日
2018年11月16日にキログラムの定義を変更することが CGPM (国際度量衡総会)で可決され, 本日2019年5月20日により全世界的に施行されることとなった.
いままでのキログラムの定義は次のように物質に依存する定義であった。
- 水1リットルの重量
- 大気圧下で氷が溶けつつある温度における水1リットルの重量
- 最大密度(液温摂氏4度)における蒸留水1立方デシメートル(1リットル)の質量
- アルシーブ原器 (有体に言うと白金塊) の質量
- IPK (国際キログラム原器: 白金とイリジウムの合金)の質量
水はいろんなものを自然に溶かし込むし、金属も徐々にいろんなものを吸着して変質するので不変で安定したものというにははばかられた.
それでもIPKは誤差1億分の5という精度ではあったが, 近年の科学技術の発達により, これでも精度は足りないという状況であった.
今回の改訂は, 特殊相対性理論から得られた式 E=mc2 と光子エネルギーの式 E=hν から m=hν/c2 を得るので, 今までは実験値であったプランク定数を真の意味で定数とすることにより キログラムが定義されるということになる。
ただ, この定義に至る裏側で, 日本やドイツを中心とする科学者たちは (IPKと比べれば)手軽に作成できる原器を作り, その精度を裏付ける役割を担った. その原器はケイ素(シリコン)結晶である. このあたりの話は産業技術総合研究所のウェブサイトが詳しい.