万難を排しても観戦したかった将棋の順位戦A級最終局. 前日に現地入りしたかったが, 利用する予定の公共交通機関が荒天のために運休するかもしれず, 不安に苛まれながら時期を待っていたが, 結構な遅延があったものの何とか運行し, 無事前日 (3月1日) 入りを果たせた.
順位戦はリーグ形式で行われる棋戦であり, 八大タイトルの中でも竜王位と並び最上位とされる名人位をかけた予選の位置づけとなっている.
順位戦は上位のリーグから順番にの A 級 (原則 10 名) から B1 級 (原則 13 名), B2 級 (この組以下は人数不定), C1 級, C2 級の5つのリーグからなる棋戦である. 日本プロサッカーの J リーグのように, 毎年各リーグの上位と下位でそれぞれ入れ替えが発生し, 飛び級の精度は存在しない. A 級の最高成績者がが名人と七番勝負を行い, その勝者が次期名人となる. リーグ終了時点で相星の場合, 該当する棋士の優劣は前期の順位の高い順に次期の順位が割り当てられるため, 仮にリーグの昇降級及び残留がリーグ途中で確定しても, 次期の順位に影響がある限りはいわゆる捨て対局はほとんど発生しない. よって, 他の棋戦にあるリーグ戦とは異なり, ほぼ全員が最後まで気が抜けない棋戦となる.
さて, 大盤解説会が始まるまでに時間があったので, 三保の松原を見て歩きつつ時間を過ごし, 記念写真を撮りつつ, 対局が深夜に及ぶことが予想されることからドリンク剤を調達しておいた.
さて, 対局前の状況は次のとおりであった.
最終局前の勝敗状況 (名人挑戦 1 名, 降級 3 名)
前期順位 |
氏名 |
勝 |
負 |
次局対局相手 |
9 |
久保利明 王将 |
6 |
3 |
深浦康市 |
10 |
豊島将之 八段 |
6 |
3 |
広瀬章人 |
2 |
羽生善治 竜王 |
6 |
4 |
(対局なし) |
1 |
稲葉陽 八段 |
5 |
4 |
行方尚史 |
4 |
広瀬章人 八段 |
5 |
4 |
豊島将之 |
8 |
佐藤康光 九段 |
5 |
4 |
屋敷伸之 |
3 |
渡辺明 棋王 |
4 |
5 |
三浦弘行 |
7 |
深浦康市 九段 |
4 |
5 |
久保利明 |
11 |
三浦弘行 九段 |
4 |
5 |
渡辺明 |
5 |
行方尚史 八段 |
3 |
6 |
稲葉陽 |
6 |
屋敷伸之 九段 |
2 |
7 |
佐藤康光 |
順位戦の他のクラスの最上位における相星は前期順位により昇級枠の足きりが発生するが, A 級最上位での相星は前期順位をもとにしたパラマス式トーナメント (ステップラダー) が組まれ, 最後の勝ち残りが名人に挑戦する. 今回の場合は最大で 6 名が 6 勝 4 敗で並ぶ可能性がある.
逆に, 降級枠に目を向けると, 屋敷伸之九段が最下位で降級することが確定してしまっているので, 数少ない捨て対局となってしまっている. もちろん, 勝ち負けで対局料 (ボクシングでいうところのファイトマネー) は変わるはずなので, そういう意味では手抜きをすることはないはずであるが… あとの 2 枠が気になるところである. 行方尚史八段はかろうじて残留の目があるものの, 自身が勝ったうえで深浦康市九段と三浦九段がともに負けないと残留できない. 渡辺明棋王, 深浦康市九段, 三浦弘行九段は勝てば自力で残留が決められるので, 何としてでも勝ちたいところ. 特に, 渡辺明棋王と三浦弘行九段は直接対決するので, 残留決定戦の様相となっている.