ベイズの定理(もっとも単純な例)

ベイズの定理とは事後確率と事前確率の変換を表したものである. ここでは最も簡単なモデルを取り扱ってみよう.

ここでは以下の仮定をする.

  • 日本人全体のうち, あるものMをもっているという比率を π とする.
  • あるものをもっている日本人に対し質問Qを行ったときに期待した回答(私は確かにMをもっている)が得られる確率をπAとする.
  • あるものをもっていない日本人に対し質問Qを行ったときに期待した回答(私は確かにMをもっていない)が得られる確率をπSとする.

これらの仮定のもとである日本人に対し質問Qを行ったところ, 私は確かにMをもっているという回答を得た. その人が本当に M をもっている確率を求めてみよう.

結論から言うと, これはベイズの定理によって計算できる.

実際に M をもっているという事象を H, 質問Qにより私は確かにMをもっているという回答を得るという事象をAとする.

求める確率は Pr(H|A) であり, これはベイズの定理により Pr(A|H)Pr(H)/(Pr(A|H)Pr(H)+Pr(A|¬H)Pr(¬H)) に等しい.

これに仮定で設定した値を代入すると (πAπ)/(πAπ+(1-πS)(1-π)) を得る.

では, 最近話題の COVID-19 に対する PCR(polymerase chain reaction)検査についてこれを当てはめてみよう

インターネットに転がっている記事を斜め読みしたところ, πA=7/10, πS=9/10 程度らしい. 罹患率はあえてπとしたままで上記の計算式にこれを代入すると 7π/(6π+1) となる. この式により, 母集団全体の罹患率と検査陽性判定のときの実際に罹患している確率が式でつながったことになり, 横軸を母集団全体の罹患率, 縦軸を検査陽性判定を受けた下での罹患率としたときのグラフを WolframAlpha に表示してもらった.

これを見る限り, 母集団の罹患率が小さいうちは検査で陽性と判定されたところで要精密検査となるのは明らかだ. PCR検査自体が低コスト(価格的にも時間的にも)だとしても, 後続の検査を合わせると高コストになってしまうことは避けられない.

政府機関が所定の症状をもって専用窓口に相談したのちに専用外来で受診するように案内したのはこうした理由もあるのだろう. こうすることで結果的に π が増えるので検査の陽性判定に意味を持たせることができるからだ.

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