円環

円周率とは, 円の周長と直径の比率である. 特徴的な値であるため, ギリシア文字の π を当てられることが多い. その比率は円の直径によらず一定で, およそ 3.14 程度 (実際には超越数(無理数の一種, 有理数を係数とする代数方程式の解にならない数)) であることがよく知られているが, どうやってその値を評価しているのだろうか.

素朴な方法として, 同じ円に内接する正多角形や外接したりする正多角形の周長を求め, 円周長の下限や上限を見つけるというものがある.

アルキメデスは同じ円に対して内接及び外接する正多角形 (当時は 2 のべき乗の 3 倍数の辺をもつもの) の周長の関係について, 次のことを発見したという.

外接正多角形の周長と内接正多角形の周長の調和平均はそれらの倍の辺の数を持つ外接正多角形の周長に等しく, 内接正多角形の周長とその倍の辺の数を持つ外接正多角形の周長の幾何平均は前者の内接正多角形の倍の辺の数を持つ内接正多角形の周長に等しい

これを現代風に書き改めると, ある円に内接する正 n 角形の周長を pn, 外接する正 n 角形の周長を qn とするならば, q2n=2/(1/pn+1/qn), p2n=√(pnq2n) が成り立つ.

これは, 円の直径を R とすると, pn=Rnsin(π/n), qn=Rntan(π/n) であることから直ちに導かれるが, 当時は三角比の概念自体はあったものの, それを簡易的に表現する手段はなかったと思われる. アルキメデスはこの関係を用いて正 96 角形についての計算を行い,223/71<π<22/7 を得た.

試しに計算してみたところ, p3×2n={(3/2)√3, 3, 3(√6-√2), …}, q3×2n={3√3, 2√3, 12(2-√3), …} を得た. 正十二角形の周長を求めた段階で, 円周率はは 3.1 よりは大きいけど 3.22 よりは小さい… といった評価にしかならず, 残念ながら 3.14 程度という結論すら出せなかった.

このような図形 (幾何) による解法では精度がなかなか上がらず, 文献によればルドルフの計算による小数第 35 位までの計算がこの方法による手計算記録らしい.

現在は図形的なしがらみから解き放たれ, 解析的な方法 (無限級数) の研究が進み, コンピュータによる計算を行いやすくなるよう研究が進められているという.

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